すべての夢のたび。

1日1記事ぐらいな感じでいきたい雑記ブログ

見知らぬ人のなかで生きるぼくのDNA

骨髄ドナー体験記?の投稿後、「そういえば、採取手術の様子をまったく書いてねえ!」と気づいたので、追加します。


ぼくが入院したのは、東京近郊の某大学病院でした。駅からバスで十数分の、かなり大きいところ。これは、骨髄採取手術をやっている病院(けっこうある)のなかから、自分の都合で選ぶことができます。ただし、病院側の都合もあるので、まったく自由というわけにはいきません。

ここの先生がとても素敵な先生でした。実は、最終同意書にサインしたときの都内の某大学病院の先生が、なんかひどく事務的な感じで、まぁいろいろあったのかもしれませんけど、こんものか?とちょっと思ったんですよ。でも払拭。たいへん丁寧に、こちらの疑問に答えていただき、不安(ないんだけど)を取りのぞこうとされてました。しかし、そこの病院は骨髄採取・移植の実績ではちょっと有名なところだったらしく、それを知らずに「近いし」とかの理由で選んでしまったぼくに、先生はややがっかりしておられました。

面白かったのが、小児科だったところ。小児科で手術をする、というのではなく、骨髄移植の担当の先生がそこには何人かおられるのですが、手術は持ち回りで、今回はたまたまふだん小児科を担当されている先生の順番だったと。なので、診察や検査の待ち時間、子供たちにまじって小児科の待合室でぼーっとしてました。


入院は4日でした。スケジュールはこんなかんじ。

  • 1日目(木):午前入院、午後検査
  • 2日目(金):午前手術、午後安静
  • 3日目(土):一日安静
  • 4日目(日):午前退院

たいてい4日になるようですが、3日や5日という場合もあるらしい。そのへんはよくわかりません。あと、このように土日を絡めるのは、病院によっては無理のようです。休日の手術や退院がたぶん難しいのかも。


1日目は入院。朝から病院です。コーディネーターさんが手続きとかはやってくれます。看護婦さんに病室に案内され、軽く説明を受けます。で、着替え。入院する以上Tシャツとジーンズというわけにはいかないらしい。トレーナー、スリッパ。ここでかなりフンイキが出てきます。お昼はお爺さんお婆さんにまじって病院食。たまにはいいでしょう。午後は検査検査。血液、尿、身長体重肺活量(たぶん、麻酔のため)、心電図。ほかにもなんかやったかも。

あと、麻酔医の先生(手術医とは別にいます)から、全身麻酔に関する説明を受けます。で、「危険性は承知してます」の書類にサイン。ぼくは全身麻酔は経験あるので慣れたもの。先生も安心してました(麻酔事故に遭いそうな人を見抜くのは、なかなか難しいようなのです)。ただ、以前の経験で懲りたのが尿道カテーテル。手術中はもちろん、手術後もしばらく絶対安静なので、管を尿道につっこんで強制排尿。そんなもんプレイでしか使わないんだと思ってました(違)。このカテーテルぶっさし状態が、ちょっと痛い。それと最後に看護婦さんに抜いてもらうのがちょっと恥ずかしい(人による)。というか、どうやって入れるのか想像も付きませんよ? しかし、今回は麻酔時間が短いので(=骨髄採取量が少ないから)、たぶんやらないで済むでしょうとのこと。ほっとしました。

それと、買い物。入院前にコーディネーターさんから入院雑費として5000円くらい受け取ってた気がします。これで、ジュースやらお菓子やら新聞やら。これは本筋ではなく、重要なのは手術衣とT字帯です。手術衣は正式名は忘れました。もちろん医者が着る方じゃなくて手術される患者が着る方です。ゆかたっぽいあれ。なんと使い捨ての紙製。T字帯は綿のふんどしみたいなの。どちらも「脱がしやすさ」のためです。

手術前なので夕飯は食べなかったかな?


2日目、朝から手術。看護婦さんに手術衣とT字帯に着替えるよう言われます。病室で待っていると麻酔医の先生が来て、予備麻酔?の注射をされます(ちょっと痛い)。「……なんか、あまり効いてるように思えないんですけど!?」「あはは〜、そんなすぐに効く人はいませんよ〜」 そして、あの、「車輪付きベッド」が病室にやってきます。乗り移り(ひとりでできるのに、なぜか手伝ってもらわれる)、寝て、病院の廊下の天井を眺めながら手術室へ。かなり患者っぽいです。

そして手術室に到着。壁とかやっぱりあの色でTVドラマだ!おおライトが!と思ってる間もなく、麻酔医の先生から「はいこれ吸ってー、数かぞえてー、1、2、3……」 3で寝てます。次の瞬間は病室です。もう手術終わってます。この、全身麻酔の「眠りに落ちる早さ」「覚める早さ」「途中の抜け落ち加減」は、ほんとすごいと思う。普通の眠りの眠りとまったく違う感じで面白いです。

これではあんまりなので、採取の様子がどんな感じか補足します。手術手術って言ってますが、実際には、注射器(採取器?)で骨髄液を抜くだけです。抜く場所は骨盤。ただーし、実物を見ると「げ」とちょっとビビりますが、針のふとさがエンピツの芯ぐらいある、巨大な注射器状の物体です。で、これで1回5-10mlずつ、合計500-1000mlの採取を行うわけです。何回針がぶっささるか、わかりますよね? 骨がもろくなってしまうので、刺す場所は何度も変えます。採取量が多い場合は、あらかじめ採取した自分の血を、手術中に輸血して戻すこともあります(ぼくはやりませんでした)。全部で2-3時間ってとこでしょうか?

病室で目が覚めると、点滴されてました。尿道カテーテルはなかったので一安心。看護婦さんから「お疲れさまでした」と言われました。まだ午後になったばかりです。しばらくしたら起きても特に問題はない、と聞きました。せっかくなのでガラガラ(点滴の袋をぶらさげるやつ)を押しながら病院内を歩いてみました。採取の針を刺した場所(腰の後ろ側、背骨の脇)には鈍い痛みがありますが、たいしたことはありません。寝るときに圧迫されるとちょっと痛いくらい。1日でおさまりました。でも、人によってはけっこう痛い場合や、しばらく痛みが残ることもあるそうです。点滴はブドウ糖とかのあれ(点数稼ぎ?)です。看護婦さんも事情を知ってて「ね〜、邪魔ですよねこれ〜」って感じで、1パックですぐ抜いてもらいました。


3日目は安静にしてる日で、単なる入院患者です。1日読書して過ごしました。


4日目はもう、朝から退院。日曜日なので先生もいませんし、病院内も静かです。洋服に着替えて、コーディネーターさんに付き添われ、ナースセンターに挨拶して「お大事に〜」などと言われて苦笑し、休日用の出入り口から退院。あっさりしたものです。なんとなく、タクシーで駅へ。帰宅して午後はどっかに遊びに行ったと思います。


最後の日に、3000円分だかの図書券をいただいた気がします。それに加えて、検査のために病院に行くときの交通費などは、全部骨髄バンク側持ちで、1銭も出す必要はありません(でもいちいち金額をメモっておくのが面倒で、ほとんど請求しなかった)。入院中の入浴の記憶がなぜかないですが、1日目と3日目はシャワーを浴びたはず! コーディネーターさんは毎日顔を出してくれてたと思います(実際超大変な仕事だと思う。頭が下がります)。


こうしてあらためて振り返ると、なんだこのお気楽ドナーは!って感じですね。でも真剣じゃなかったわけじゃないですよ。真剣に、状況を受け止め、すべてを楽しんでいただけです。コーディネーターさんや、担当の先生や麻酔医の先生、看護婦さん、自分の家族や患者さんとその家族、そういう人たちにぼくの分の重みを背負ってもらっているつもりはない。みなが、もっと軽く考えればいいんだ、とぼくはそう信じてますし、今後もそういう態度でいくつもりです。真剣と深刻はちがうんだぜ?