すべての夢のたび。

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死体に麻酔は必要か?

脳死臓器移植は正しいか (角川ソフィア文庫)」を読んでいます。自分は脳死臓器移植は「まぁいいんでない?」程度に思っていたのですが、この本の前書きだけ読んでもう考えが変わりつつあります。

ラザロ徴候(脳死患者がいろいろ体を動かすこと)については聞き及んでいました。「脳死・臓器移植問題がよくわかる事典」でこのような例が紹介されていました。(『脳死・臓器移植の本当の話』(PHP新書)95Pより、とのこと)

脳死判定から一五時間経った後、四肢の伸長運動に続いて、左足がベッドから自然に持ち上がり、両腕もおよそ四五度まで上った。そして、両手を合せて祈るような動作をして、指を握りしめた。その後、両手は離れて胴体の横へと戻った。この間、両足は交互に動き、まるで歩いているかのようだった。こうした運動は自発的に四日間つづき、刺激を与えるとさらに五日間起こったという。


思っているより死体はよく動く、と。でもこれは「単なる脊髄反射である」という説もあって、まあカエルの解剖で脚をピクピクさせたりするようなものか?とか思っていたのです。しかし、「脳死臓器移植は正しいか」には、さらにこんな記述もありました。

(脳死患者は本当に死んでいるのか?という疑問の)二つ目は、脳死と判定されたドナーから臓器を摘出する際にドナーの大半が急速で激しい血圧上昇と頻脈を示すことが沢山報告されていることだ。通常の手術でこのような徴候が見られた場合は、患者は痛みを感じていると判断され、麻酔薬の量を増やされるという。脳死ドナーの場合も、このまま何もしなければ、ドナーは動き出し、のたうち回り始めるという。だからドナーからの臓器を摘出する際には麻酔をかけたり、もっとひどい場合には筋弛緩剤を投与されて強制的に動けなくされてしまうのだ。


ちょっと待てオイ、と。webで調べてみたのですが、どうもここで投与されるのは全身麻酔薬のようでした。局所麻酔と全身麻酔は根本的に異なるものです。局所麻酔は神経を部分的にブロックするものですが、全身麻酔は中枢神経の働きを抑制するものです。要するにここには矛盾がある。脳が完全に死んでいるなら、全身麻酔が効くわけはないのです。

つーか、「なんで死んでるのに動くんだろう?」じゃなくって、動くのはちゃんと死んでないからなんじゃね……?ってまず考えるのがフツーだよなぁ、と思った。


でもまぁ、いいんでない、ドナーになりたいなんて物好きはほっといて……というわけにもいかない事情があるんです。それはですね、臓器移植法を改正して、「脳死者の臓器提供の意思がはっきりしてなくても、遺族の同意があればOKにしちゃおう」と企んでる人がいるからです、皆様の自民党にな。「みなしOK」、そりゃないだろうと思いますね。つーかうっかり脳死った時に、「提供しない」って書いたドナーカード持ってなかったらアウト!ですよ。持ってても見つけてもらえなかったりとか、いや最悪見なかったフリされちゃうことだって、ないとは言えないですよねぇ。ドッグタグでも着けときますか。


最初に紹介した本には、他にも臓器移植がよくないものである理由がいろいろ挙げられています。ぼく自身は、そこまでは反対派ではなく、完全に死んでるんならまぁ好きにしてもらって構わん、とは思うのですが、脳死の判定基準自体がもう限りなくアヤシイんですよ、ということでは、ちょっと気軽に提供OK!とは言えないなぁ、という気分になってきました。仮にもし、眼も見えず耳も聞こえず喋れずでもヒッジョーにイタイ、とかいう状態があるのなら、それはちょっと避けたいぞと。