すべての夢のたび。

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「意識のハード・プロブレム」の最終的な解決の可能性について

意識をめぐる冒険

意識をめぐる冒険

歯がズキズキ痛む。この痛さはどこから来るのか。歯髄から脳に送られた信号のせい? それで納得できるだろうか。単に有機物の塊にすぎない脳の何がどう痛いという感覚を生むのか。意識と脳の関係は考えれば考えるほどわからなくなる。意識研究で世界をリードする著者が、解決不能に思える困難にどう立ち向かったのかを本音で語る。


「意識のハード・プロブレム」と言われているものがあります。Wikipediaより引用します。

意識のハードプロブレム(いしきのハード・プロブレム、英:Hard problem of consciousness)とは、物質および電気的・化学的反応の集合体である脳から、どのようにして主観的な意識体験(現象意識、クオリア)というものが生まれるのかという問題のこと。意識のむずかしい問題、意識の難問とも訳される。オーストラリアの哲学者デイヴィド・チャーマーズによって、これからの科学が正面から立ち向かわなければならない問題として提起された。対置される概念は、脳における情報処理の物理的過程を扱う意識のイージープロブレム(Easy Problem of Consciousness)である。  


脳は物理的実体であり、脳内のさまざまな活動は物理法則に従っています。で、それでは人間の意識というのはこれらのどこに位置づけられるのかっていう。それが「意識のハード・プロブレム」です。

ニューロンを流れる電気信号からどうやって、空が青いとかコーラが甘いとか、喜びや悲しみや怒りや、温かいとか痛いとか、自分はいまここにいてこの文章を読んでいるんだなぁとか、そういう感じ/クオリアが浮かんでくるんだっけ?という"難問"です。誰しも一度は考えたことが……ないか。ありますか?

それで、神経科学者であるところのクリストフ・コッホは、この件についてなんて言っているか。実に興味深いです。いや、ぼくも、そういう解決もあるだろう、と思ってたんですが、最先端にいる人がこんなことを言うとはね。

コッホはなんて言っているか? 彼は上の本で「すべての物質は意識を持つ」(のかも知れない)と言っています。意識を持つことは物質の基本的な属性である。原子あるいはそれ以下の、どんな小さな粒子でも、最小状態の意識を持っている。それらが大規模に組み合わさり構造化され組織化された情報が流れるようになると、人間の意識のようなものになると。

「いや、そうじゃなくて、いったいどうやって意識が発生してるのかを知りたいんだよ!!」って、言いたくなりませんか? なりますよね? でも、言えないかもしれないんです。

だって、例えば、「電子はどうやって電気を帯びてるのか」なんて、なにも説明がないですよね。そうじゃなくて、電気を帯びてることが電子の性質なわけです。電子を分解してみるとここのところが高速でぐるぐるしてるから電気が生まれる、なんて説明はありません(そもそもそれだと「なぜ高速でぐるぐるしてると電気が生まれるのか」をまた説明しないといけない)。つーか電子に構造なんてない。

なぜ光子は光速で空間を走るのか? ちがいます。空間を光速で走るものが光子であり、それ以上の説明はどこにもない、どうやってそんな速度を出しているのかなんて誰にもわからない、そこがいきどまりなんです。そして、コッホは、意識もそういうもんじゃねえの?って言っているわけです。どんな物質もそれを持ってるんじゃないかって。それ以上の説明はどこにもないんじゃないかって。

ぼくらはなんについても説明を求めます。聞いて、わからなければ、わからないところにさらに詳しい説明を求める。でも、最後の最後の最後のところは、単なる事実だけがあって、あとはなんにも説明はないんです。ただそういうものなんです。空がどうして青いのかは物理のことばで説明できますが、青がなぜこの色なのかはもう説明はないんです。

こういう解決、いや「解消」は、みなさまご不満でしょうか? 逃げに見えます? どうして意識が発生するのかはきちんと説明できるはずと思います? 確かに、できるのかも知れません。でも、もしかしたら、意識はただの物質の基本的属性でした、と言われてしまう日がいつか来るのかもしれない。そのショックに耐えられるように、このことを覚えておいてもいいとは思います。