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すべての夢のたび。

雑記ブログ

『意識はいつ生まれるのか』読んだ

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論


これはいい本でした。読んでよかった。

こういう意識とか脳とかの本って、いくつ読んでも隔靴掻痒な感じで、結局どうなのよ!って思ってしまうのが多いんですが、これは違った。新しい情報・知見をいろいろ得ることができました。

てんかんの患者で発作が酷い時の最終手段として、左右の脳をつなぐ脳梁を切断してしまい、発作がもうひとつの半球に波及するのを防ぐ、ってのがあるんです。それについては他の本にもいろいろ書かれていますが、左右の脳の間で連携が取れなくなるため、右半身のやっていることを左半身は知らない、みたいな症状が観察されます。それは前から知っていた。でもこの本ははっきりと「意識が2つになる」と言い切っています。意識が2つ。ひとつの人間の体に2つの意識が入ってる状態であると。やっぱりそうなのか。右半身は左脳、左半身は右脳がコントロールする。言語は左脳でしたっけ。そういう非対称な部分もあるので、声帯の奪い合いになって喋る内容がわけわかめになったりはしないのですが。

あと全身麻酔の作用機序(どうやって効くのか)も判明してないもんだと思ってたけど、もうほぼ解ってる感じなんですね。

そしてやっぱりこの、副題にも入ってる「統合情報理論」が面白い。統合情報理論の話は他の本で読んで知ってはいたんですが、この本の著者(の1人)が提唱者だった。これは新しい概念で、システムにおける統合情報量Φ(ファイ)というものが導入されます。この値が充分に大きいと、そのシステムは意識を持つと。Φの算出はとってもめんどくさいっぽいのですが、要するに名前の通りで(笑)、情報だけでもだめ、統合だけでもだめで、統合された情報でなければいかん、という感じです。

たとえば、大脳(皮質系)+視床には200億のニューロンがあるそうなんですが、小脳にはその4倍の800億のニューロンがあるとのことです。でも、人間って、初めて知ったんですが、小脳をまるごと全部取っちゃっても意識がなくなったりはしないらしいんですね(ただし運動機能には問題が出る)。ニューロンが多くても、ただ多いだけじゃだめってこと。小脳ってのはバラバラのモジュールの寄せ集めみたいなもので、全体は統合されてないらしいんです。でも大脳は統合されている。分割はできないひとつの全体として存在している。ニューロンの数(情報)が多くても小脳のΦの値は小さいので意識の有無には寄与しない。そして大脳は左右を分けたくらいではまだΦが充分大きいので脳梁切断で意識が2つになったりしますと。

(そして統合情報理論によれば、インターネットに意識が生じたりはしなさそう、というのが分かってしまう。人工知能も、今のままのハードでは意識を持つとか無理そう)

あと、脳の外部から意識の有無を判定する方法、というかハードウェアが作成されていたというのが興味深かった。ハードウェアっても、既存のものの組み合わせで、脳に磁気刺激を与えて脳波を見る、みたいな感じなんですが、意識ない状態とある状態をはっきり見分けることができるという。これすごいですよ。ちょっと怖くもある。見た目は完全植物人間でも意識があります、というのを判定できるんです。そういうケースって実は結構あるんじゃないかって示唆されている。

だいぶ頭の中が更新されたんでまたいろいろ考えることが出てきそう。"意識"のなりたちがちょっと解明されたことで、"私"や"自由意志"の定義についても少し変化がありそう。そして統合情報理論が正しいとすると哲学的ゾンビってやっぱりいなさそうかなっていう。