すべての夢のたび。

1日1記事ぐらいな感じでいきたい雑記ブログ

やさしい世界論の書きかた

「こんばんわ」
「こんばんわ?」
「神様です」
「……さようなら」
「ちょっと待って待って待って! せっかく出てきたのにさぁ」
「神様に知り合いはいませんから」
「まぁまぁそう言わずに。神様がキミの疑問に答えてあげようと思ってわざわざ来たんだよ?」
「ワタシの疑問?」
「『ワタシが生まれたのは、すごい偶然の積み重ねじゃないかしら?』」
「……。なんでそれを?」
「だっからー。神様だって言ってんじゃん! ぜんぶわかるのっ! お見通しなのっ!」
「ヤラシいんだ」
「………」

/////

「まぁ、ちょっとだけならつきあってあげてもいいですよ? で、ワタシの疑問に答えてくれるっておっしゃいましたよね。どうなんですか? 単刀直入に! ズバリ言って! それはもうはっきりとあらわに!」
「いきなりだねキミも。さっきと人変わってない? まぁいいや。キミのイメージしてるのはパラレルワールドってやつだよね。もしキミが明日バイトに行かなかったら。もしキミの両親がお互いに出会わなかったら。もし昭和天皇がまだ生きてたら。もし地球に生命が誕生しなかったら。そういう、IFの世界があるんじゃないかっていう、SFっぽい考えかた」
「そうですね。そういうたくさんのIFの果てにワタシが生まれたって思うと、それってものすごい偶然で特別で奇跡的なことなんじゃないかって気がしちゃうんです。神様に感謝したくなるくらい」
「そりゃどうも。でもね、別にそんなの当たり前で、どっこも奇跡的なことじゃないんだって。まったく人間ってヤツは、どうしてこう、自分を特別だと考えたがるのかなぁ」
「え〜? でも、ワタシが生まれるなんて、ものすっごく確率が低そうなことじゃないですかぁ」
「だってさ。ボクは神様で全知全能だから、パラレルワールドを全部一度に見れるんだよ。過去に起こったこと、現在起こってること、未来に起こることは全部知ってる。IFの数だけ存在するパラレルワールドをね、こう、テーブルの上にばーっとぜ〜んぶ並べるじゃない。そうするとね、キミが生まれる世界はかならずその中にあるんだよ。100%あるの。ていうかね、なきゃいけないの。それがパラレルワールドってことなの」
「でも、ワタシが生まれない世界の方がずっと多いですよね」
「そりゃそうだね。けどさ、いくら多くてもいくら少なくてもキミには関係ないんだよ。キミが生まれない世界じゃ、キミは『なんでワタシは存在するんだろう』なんて悩みようがないからねぇ。キミは“この世界”しか知りようがないわけよ。だから『特別かも』って錯覚するんじゃないかな?」
「じゃ、ワタシがいても、存在するとかしないとか悩まない世界もあるんですか?」
「ある」
「そこのワタシはどんなふうなんですか?」
「キミよりちょっとだけ可愛い」
「ええー??」
「だからモテる。デートするのに忙しくて、『なんでワタシは存在するんだろう』なんてことを考えてる暇もない」
「……ワタシ、そっちのがよかったなぁ」
「まぁそう言うなって。そっちじゃ、キミがボクにこうして会えることもないわけだしね。はっはっは」
「(ほんとに神様なのかなぁ……?)」

/////

「なんかぁ、まだ納得いかないんですけどぉ……」
「ん?」
「そもそもですよ、そもそも。パラレルワールドなんてほんとにあるんですか?」
「あるよ」
「ほんとに?」
「ほんとはない」
「!! どっちなんですか!?(怒」
「どっちがいい?」
「どっちがいいって……そんなの、ワタシが決めることじゃないでしょう?」
「そりゃそうか。でもさ、神様であるこのボクがそうだって言ったら、キミはなんでも信じるの?」
「もちろん信じますよ」
「ほんと? んじゃ“永遠の命”をあげるからさ、かわりにその12Fの窓から飛び降りてみてよ」
「………むー」
「どしたの?」
「……永遠の命なんていりませんもん」
「そうですか、ハイハイ」

/////

「じゃ、パラレルワールドなんてないってことにしようか?」
「しようかって、またそんな」
「まぁいいから。この世界しかないってことにするとどうなるか考えてみよう」
「そしたら、やっぱりワタシが生まれるのは偶然以外にありえない気がします」
「そうかなぁ」
「そうでしょう?」
「でもさ、こうも言える。キミが『ワタシが生まれるのは偶然以外にありえない』って思うなら、キミは100%の確率で存在する。逆説的だけど」
「え? どういう意味?」
「そのままの意味だよ。キミが生まれ、成長し、じぶんの存在に気づいたからこそ、じぶんの存在が偶然とかどうとか悩むことが可能になる。その時点で、キミの存在は偶然でなく必然になっちゃうのさ」
「でもそれは今だから言えるんじゃないですか?」
「そうだよ。キミは現在にいるのに、過去に視点を飛ばして現在を『ありえた未来のひとつ』として見ちゃうから変に感じる。現在から見れば過去は1通りしかないでしょ?」
「でも、ちょっと何かがズレて、ワタシがいない世界だったかもしれないじゃないですか」
「おなじおなじ。キミがいない世界でキミがいないことに気づくひとは誰もいないよ。結局ね、IFがいくつあっても、悩めるキミが辿り着けたのはこの世界以外にないの。これ以外の世界に分岐した場合、キミは、いないか悩んでないかのどっちかだから」
「……なんかまた、うまくダマされてるような気がするなぁ」

/////

「ダマすなんて、ねぇ。だいたいさぁ、キミ、誰と話してると思ってるの?」
「誰って、神様でしょう?」
「ハッ! マジそんなの信じちゃうワケぇ?」
「だって! じゃあいったい誰だって言うんですか!? それともやっぱりワタシの妄想なの?」
「そうかもねぇ。あるいは、神様であるボクが退屈しのぎにじぶんの中にキミを作りだして話してるとかね」
「さびしいんですか?」
「うるさいな。そういうこともあるかもねって話だよ」
「それとも………もしかしてこれはワタシの夢とか?」
「夢オチか〜〜〜。それもいいなぁ。でもキミさ、夢オチよりひどいものがあるって知ってる?」
「……なんですか?」
「例えば、ボクたち2人とも、誰かの書いたショートストーリーの中の登場人物かもしれないってことだよ」
「!!っ !!っ」
「なんか、どっかのblogに載ってるんだよ」
「ええええっ。やめてくださいいいいいいっ」
「しかもさぁ」
「まだあるんですか(汗」
「ほんとは書いてないの」
「え」
「脳内なの。妄想なの。書いたつもりになって脳内で2役で会話してるだけなの」
「………」
「ソイツがさぁ」
「もういいですようううう」
「実は、2ちゃんねるでも有名な超イタい奴。どこのスレに書いても放置される。短足で小太りで眼鏡。童貞。ネカマ。さっき万年床の上でカップラーメンを食べようとして容器を倒してました」
「………助けてくれませんか?」
「無理。」