すべての夢のたび。

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空から女の子が降ってくる

【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。


いつもの場所に自転車を停めてカギを掛けようとしたその時、頭上で、それはもう凄まじいとしか言いようのない轟音が響いた。

「なっ!?」 

僕は反射的に飛び退こうとして、周りの自転車数台と一緒に後ろへ倒れ、尻餅をついてしまう。呆然と見上げる僕の目に、ひどく変形した駐輪場のトタン屋根と、開け放された校舎5階の窓が映った。

「……う……う………いた………………」 



「携帯さー、なんで壊したの?」「んー。やっぱり返事来たらさー、決心鈍りそうでしょ?」「『バイバイ』とか自分で送っといて」「あはは、そうだよねー」
屈託のない笑顔だ。
「靴は?」「くつ?」「なんで脱ぐわけ?」「ん〜……」
視線を彷徨わせて、少し考え込む。
「……なんとなく、かなぁ」「なんとなくかよ」「なんとなく、土足じゃマズいような気がして」「ああ…」「日本人だしねー」


「病院はいいよねー」彼女が言う。「?」「静かで、おちつくよ」「そっか……」「うん」
長い沈黙。
「……あ、あのさ!」「なに?」「なんかない? 欲しいものとか」「なんかって?」「なんかだよ」「そんな急に言われても………あ」「なに?」「あーでも、男の子にはちょっと難しいかなー?」「なんだよそれ」「あははっ、まー後でメールするよー」「バカ、病院であんまり使うなよ。まぁまた来るから」「うん」
背中に声が掛けられる。「ありがとうねー」



夜、帰り道、自転車をこいでいるところにメールが来た。ポケットから携帯を取り出し、片手で開く。彼女からだ。

“バイバイ”

「ちょ……おい!」
慌てて自転車を停め、すぐに掛け直す。コール音。出ない。出ない。出ない。心臓がバクバク言い始めるのがわかる。

出た。

「もしもし!もしもし!? おい!お前!何やってんだよ!?」
「………………」
「おい! 聞こえてんのか!? おいっ!」
「………………ぷ」「!?」「ぷっ! あははははっはあははははははははははははっ!」
「おい!」「やーごめんごめーん、驚きすぎだよー?」「はぁ!?」「へへー、声ガ聞キタクナリマシタ」「…………てっめー、マジ殺す! 次会ったら絶対殺す!!」「いやーこわーい。死にかけた人にひどいんだー?」「ふざけんな、切るぞ!」「あっ」「なに?」「おやすみのキスを……」「ばっ、おまえいい加減にしとけよ? じゃあな!切るよ!おやすみ!」「おやすみ〜」


電話を切った。足から力が抜けて自転車ごと転びそうになる。まったく。空から女の子が降ってくるなんて、大抵はロクなニュースじゃあないのだ。