すべての夢のたび。

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Appleの企みを考える

iTunesのクラウド化についてちょっと考えてみる。今回のWWDC(ほんの2時間ちょっと後に開会だ)で発表されるんじゃないかと言われているものだ。

ご存知のとおり、iTunesはMacやWindows上で楽曲の管理・再生、iPodへの転送を行うソフトとしてスタートした。ところがiPhoneが発売されて以来その役割は大きく拡大され、楽曲のみならずiPhoneアプリの管理、写真や動画の管理、アドレスやスケジュールの同期、それにiPhone上のデータのバックアップまでもサポートするようになった。

そしてiTunesのその役割は最近日本で発売されたiPadに置いても同様である。iPadは非常にとっつきやすいユーザインタフェースを持ち、今までパソコンを使いこなせなかった子供や女性、中高年層、猫やイルカにまでアピールする製品となっている(誰かが「パソコン版らくらくホン」だと言っていた)。ところが、その誰でも使えるiPadを実際に使い始めるには、母艦として誰にでもは易しくないパソコンの操作を覚えることが、現状どうしても必要なのだった。

そこでクラウド版iTunesの登場が期待されるわけだ。iPad上のデータのバックアップを、インターネットの先にあるデータセンターに持つことにする。写真も動画も、iTunes Storeで買った楽曲も、アプリのバックアップも、全てクラウドに持つことにするのだ。そうすることで、パソコンは不要となる。iPadを真に一台目のコンピュータ?として購入することが可能になり、ユーザ層がさらに拡大することが見込めるわけである。


さて。しかしiTunesのクラウド化にはある懸念が持たれているんだった。

Appleは近頃、クローズドである、独裁的である、とよく批判されている。以前はMicrosoftがそんなようなことを言われていた気がするが、Windows 7リリースからとんとその名を聞かなくなってしまったように思う。代わりに、時価総額でMS超えを達成したAppleがいまやその位置にいるのかも知れない。

Appleがクローズド・独裁的と言われる所以は、例えばiTunes Storeで購入した楽曲の扱いにある。多くの曲には、iPod以外に転送することができないプロテクトが掛けられている。これにより、かつては携帯プレイヤーと言えばWALKMANだったのにそのシェアは逆転し引き離され(これはSONYの怠慢も大きい)、それ以外のメーカーなどはとっくに見る影もない。Palmなど、自社のスマートフォンにiTunesから曲を転送するソフトを作成し対応したメーカーもあるが、すぐにAppleに対策を施されて転送できなくされてしまう。

Appleは全てを自社サービスでまかなおうとしている。iPhoneやiPodやiPadを使っていただいて、iTunes Storeで楽曲や動画を買っていただいて、App Storeでアプリやゲームを買っていただいて、iBook Storeで本や雑誌を買っていただいて、それらのあらゆるものをクラウドiTunesを使ってAppleのデータセンターに保存してください、と言っている。Appleの、データセンターだ。つまりそいつはGoogleでさえ手の届かない場所にあるわけだ。

すると、こういうことになる。

ところが今のまだiPhoneが優位な立場にいる間にiTunesをクラウド化して、写真、音楽、映像などあらゆるコンテンツデータをiTusesクラウドで管理するようになると、ユーザはiPhoneから離れられたとしてもiTunesからは離れられないだろう。人生の思い出をiTunesに預けてしまって、どうやってAndroidに移行できるだろうか。


上のエントリの筆者はまったく鋭い。ジョブズはユーザにAppleへの永遠の忠誠を誓わせようとしているのだ。もちろん彼は、ユーザのためとか世界のためとか、なんかもっともらしいことを言うだろう(笑)。だが実際利益を独占するのはAppleだ。アプリ内の広告さえも、Appleが買収した会社を通してしかできなくすることを考えているらしい。

しかし、思う。ここで起きているのはほんとうにそんなに悪い話なのだろうか? クローズドだ、独裁的だと言われていても、現にApple社製品を買う人は増え続けているし、しかも高い顧客満足度を維持し続けているではないか? それはなぜなのだろうか?

おそらく人は、自分が満足している限りに置いては、統治のされ方はさほど気にしないのだろうと思う。うまく行っているなら、別にいいではないか? だってオープンなLinuxは結局素人には使えないままだったではないか? App Storeの審査基準が不明瞭で独善的と批判されたとしても、無審査のAndroidは悪意のあるアプリやウイルスの危険は結局全て自己責任で回避するしかないではないか?

Microsoftには、ビル・ゲイツには、あまりうまくない部分があったのだろう。いや、商売的には大成功していたが、好きで使っている、という人はそう多くなかったのではないか(「みなが使っているから、仕方なく」)。ところがAppleは商売もうまけりゃ人気も高い。どこで差が付いたのか。やはりあの、口のうまい男のせいか(笑)。

まぁMacは必ずしも成功したとは言えないと思うんだけれども、iPod、iPhoneと立て続けに大ヒットを飛ばしてまさに世界をchangeし、いままたiPadで3度目の奇跡を起こそうとしている、一度は癌で死線をさまよってやっと戻ってきたアイツ。奴に、もうちょっとは、付き合ってみてもいいんじゃないか?と思う。その企みでうまくこっちを騙してくれ、いい夢を見させてくれよ、頼むよ、と思うんだった。