- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2011/02/23
- メディア: Blu-ray
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Amazonで買ったブルーレイを昨日の夜観ました。"『月に囚われた男』『地球に落ちて来た男』ボックスセット"、というのもあったんで、なんだこれ、シャレか?と思ったんですけど違くて、"月"の監督ダンカン・ジョーンズは"地球"の主演デヴィッド・ボウイの息子なんですね。親子セット。
ヘリウム3という核融合発電の燃料を月面で採掘するため、サム・ベルは月の裏側にある基地に3年契約でたった1人で送り込まれています。その契約も残り2週間ほどになったある日、事件が起こって……というようなあらすじ。
で、予告編見るとあれ?と思うでしょうが、ネタバレしてしまうと、彼はクローンなんですね。まぁこのくらい言っちゃっても映画の面白さにほとんど影響しないので、安心してご覧いただけます(監督自身がそう言っている)。ていうか予告編がバラしすぎだよね。
サムはクローンである自分を悲しみます。混乱し、怒り、悲しみ、そしてやがて受容していくのですが、このあたり、主演のサム・ロックウェル(こちらもサム! ややこしい)の演技が素晴らしくてものすごい引き込まれる。
でもよく考えると、ここ以下ちょっと映画から脱線して一般的な話になりますが、クローンであることすなわち悲しいこと、ではないんですよね。サムは、自分はサムだと思っていたのに実はサムじゃなかったと知ってしまった。そのアイデンティティを奪われてしまった自分が悲しいわけです。
攻殻機動隊でもありましたよね、ニセの記憶を植え付けられる話。過去が奪われるということは未来もまた同時に奪われるということなのです。ホンモノ対クローンでクローンだから悲しいんじゃなくって、このことって、すごく人間的な普遍的な悲しみなんですよね。
ちょっと考えると、たとえばぼくが自分がクローンだと知ったとしても、でも世界のほうは何も変わってないわけです。ある日お前はクローンだと知らされても、生活が今まで通りふつうに回ってるなら、悲しむ必要はない。考え方ひとつなんじゃないかと思う。クローンなんて概念がそもそも新奇なものです。もしサムがその概念を持ってなかったら、俺がホンモノだ、いや俺こそがホンモノだ、ってどつきあってるうちに映画が終わっちゃうと思うw
見方ひとつで世界は悲しい場所になったり、そうでなくなったりする。そういうものなのです。さて、ところでぼくらはホンモノなのでしょうか?
子供の頃に、世界から疎外されているという感覚から、自分はひとりこの星に送り込まれて訓練を受けているのだ、いつか時が来たら合格したら元の世界から迎えが来るのだと、そういうような空想をしたことがある人は結構多いのではないでしょうか。大人になったいまそんな話にリアリティは持ちにくいですけど、でも、いまこの自分の生活がホンモノだっていう、そのこともほんとは無根拠なんですよね。無根拠なんだけど、ホンモノだ、これがそれだと思ってみんな生きてる。立てるはずのない世界の外側に足場を仮設して俯瞰視点で見てる。
でもいくらそのつもりでも、きっと不意に悲しみに襲われたりすることはあるはずなんですよ。だってクローンとかホンモノとか実は関係ないから。普遍的なものだから。
2枚で3000円なのでなんとなく合わせて買った『ブレードランナー』ですけど、よく考えたらこれもレプリカントの悲しみの話だった。そしてダンカン・ジョーンズ監督はブレードランナーもお気に入り映画らしい。ミッション:8ミニッツも近い辺りが題材だったし、そういうのを上手く描ける監督として次作も期待したいです。あと書き忘れたけどサントラ『MOON: Soundtrack』も素晴らしかったので注文しちゃった。