すべての夢のたび。

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空(くう)を遺す

 イタリア・ナポリ近郊にあった古代都市「ポンペイ」は、紀元79年8月24日(日本の弥生時代)、ヴェスヴィオ山の大噴火によって噴火開始からわずか19時間で滅亡した。火砕流と火山の噴出物によって街全体は埋もれ、1748年に本格的な発掘がスタートするまで1700年近く、その存在は地中深くに眠ることとなった。

 死の灰は一気に町を飲み込み、噴火によって命を落とした人々の姿までをも、そのままの形で封じ込めていた。死者は約2000人から1万人以上とされている。死者は死んだままの姿で灰の中に埋もれ、肉体が朽ちた後もその空洞は残った。人体があった空洞に石膏を流し込むという手法で掘り出した像は、ポンペイ人の石膏像として展示されている。


ポンペイは火山の噴火で全滅、くらいの知識はあったんですが、こんなふうになってるとは知りませんでした。住民は火砕流に文字通り飲み込まれて死亡し、その遺体はやがて腐ってなくなったため人の形の空洞になった。そこに石膏を流し込んで型取りすると、さて、どうなったか。

これはリンク先の写真を見ていただきたいのですが、ほんとに、見事なくらいに、「逃げ遅れた人」のかたちがそのまま固定されてるんですね。大人も子供も、どうやら犬のもある。一瞬で全身が飲み込まれないと、こういうふうにはならないでしょうね。かつて生きていた人たちの生が、死に切り替わる瞬間がそのままに切り取られている。

石膏を流し込んでやれ、って発想もすごいですけど、まさかこんなにあからさまな形が出てきちゃうとはだれも思ってなかったんじゃないかなぁ。ちょっと手を合わせたくなります。と同時に、自分もいつこういったことになってしまうかもわからんな、などと考えたりもします。こんなくっきりとした形では残りたくはないですけれども。