すべての夢のたび。

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「クロノスタシス」とはどういうことか

「死ぬのが怖い」とはどういうことか』を読み中なのですが、クロノスタシスという現象の解説が面白かったので紹介します。そういう現象が起こることは知ってた(=脳科学系のいろんな本に書いてある)んですが、今回は誰もが経験ありそうな話で具体的だったので。

しかし名前がカッコいいですねクロノスタシス。日本語にすると時間停滞とかそんな感じになっちゃいそうですが。

さてそれはどういうものかっつーと、秒針がカチコチ動く時計にふっと目をやると、あれ、いま一秒以上止まってなかったか!?ってやつです。ありますよね。まぁ最近腕時計はしてないのですが、そういうことは確かにあるあるでした。で、解説。

 人間の目にはつねに眼球運動があり、眼球が動いているときの画像はあらゆるものが流れているような画像になってしまい、画像が乱れる。このため、人間の脳は、眼球が動いている間に送られる情報は無視する。そして、その間の視覚を、眼の動きが止まったあとで得られた情報で埋め合わせる、というのだ。
 奇妙なことに、眼球が動いていたときの視覚情報は、眼球が止まったときの、つまり、眼球が動いていたときにとってみると、わずか(零コンマ何秒)ながら未来の視覚情報で置き換えられる。言い換えれば、ある瞬間(眼球が動いているとき)の視覚のクオリアは、実はそのときの現実世界の情報ではなく、この例の場合は未来の視覚情報だ、ということだ。こんなことが日常で普通に起きているのだ。


この現象は確かに経験があります。時計を見るタイミングによってはこれが起きることがある。ちょうど秒針が動いた瞬間に偶然に目をやると、その一瞬の時計の映像はブレてて使えないので、代りに時間的に未来の映像で埋め合わせる。それによって、一秒以上秒針が止まった映像が得られることになる。理屈はわかります。なるほど、とは思うけれど、微かな違和感が残ります。

では、例えばテレビの生中継でそれが可能か。一瞬中継が途切れた時に未来の映像で埋め合わせることが可能か? 無理ですよね。なぜなら未来はまだ存在していないから。存在していない映像を使うことはできない。

ではなぜ、人間の脳内ではそれができるのかというと、答えはひとつで。「物理的な"今"と人間の体感する"今"はズレている」からにほかなりません。もちろん体感する今のほうが遅れている。

いや、そんな。それじゃまともに動けないでしょ。歩いてて転ぶでしょ。そういう反論もあるかもしれませんが、それは起きない。身体の方はそんなの意識しなくても動けるから。歩くのにいちいち意識的に右足出して左足出してなんてコントロールしないですよね。それは無意識がやっている。

"今"のズレってのは、要はテレビのデジタル放送みたいなもんです。あれはデジタル信号を圧縮・復元する関係で、物理的な"今"より2秒遅れている。でも別に「テレビの中の人」は混乱してないですよね、あたりまえだけど。あれと同じです。

もしテレビが5秒遅れてもいいよということになったら、いまより増えた3秒を使って、生中継でカメラが一瞬不調になっても、その後の映像を使って補完して綺麗に編集してから放送するような、そんな芸当もできるようになるかも知れません。それでも視聴者は放送が"今"を映しているのだと疑うことはないでしょう。

クロノスタシスは、このようにして人間には"今"のズレが起きていることを垣間見せてくれます。受動的な意識(受動意識仮説!)はすべてが終わったあとで編集済みの映像を見せられているわけです。だから矛盾がないんですね。

ちょっと紹介して終わる予定だったのが長くなってしまったw