すべての夢のたび。

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羽田空港跡地地区土地区画整理事業

羽田空港跡地地区土地区画整理事業ってやつの、地域住民向け説明会に行ってきました。近所の小学校の体育館で午後7時からでした。百数十人の出席者がいたと思います。


羽田空港に車で、または自転車とかジョギングで、多摩川寄りから入っていった人は知ってると思いますが、あの辺、鳥居がありますよね。そして交番がある。そこら一帯ってなんか空き地になってます。実は空港の滑走路は最初あの辺に作られていて、そしてあとで今の位置に作り直されたらしく、現状、羽田空港の左下あたりはなーんもないところ、になっているわけです。そこを再開発しようって話です。

ぼくは、羽田空港の近くになんか新しいホテル作るらしいぞ、って話は知っていたので、今回の説明会ってきっとそれの話だろうと思ってて、それを聞いてきて書くつもりでした。しかしそうはなりませんでした。

今回、羽田の住人向けに説明された「羽田空港跡地地区土地区画整理事業」ってのは、多摩川-海老取川(蒲田くんが通ったはずの川だけど映像はない)-環状八号線に挟まれた三角地帯の土地の造成をする話のみで、造成したあとどうするとか、他の区域はどうするとか、そういう話はまったく対象外だったのです。あっお役所仕事ってこれか!って思いました。


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説明会の時間は1時間半。最初の30分で、事業の説明。あとの1時間で質疑応答です。質疑応答にそんなに時間いるのかな?って思ってた。

事業の説明はとどこおりなく進みました。説明会メンバーの、区役所の人とか、事業を監督する会社の人とか、施工業者の人とかの関係者紹介・挨拶から始まり、工事の概要、具体的な実施方法、想定される問題点と対策、そんな感じで。丁寧に説明を受けたと思いました。

その後の質疑応答です。手を上げて、司会に指名され、マイクが渡されます。住所氏名を名乗り、おじいさんが、いきなり喧嘩腰なのです。あれ。あれあれ。ここまで、モメる局面、なかったですよね? なんでいきなり初声から食って掛かってるんですか???

でも、そういうものらしかったです。地域住民相手の説明会の質疑応答で、手を上げて質問するのは、大半が、ヒートアップした高年齢の男性なのです。1人だけ、バスの運転手をしている(京急しかないw)という比較的若い人が「工事中も仮の道路は片側2車線確保よろしく!」みたいなことをもっと丁寧な口調で陳情してましたけど、あとは爺さんばかりでした。

ぼくは思いました。ああいう人たちは、怒っている状態が常の状態で、ただただそれを吐き出せる場所を待っているのだと。ぼくはリアルで「お前ら俺らの払った税金で食ってる癖に!」ってセリフを今回初めて耳にしました。ほんとに言う人いるんだな。

みなさんいろいろと、ぼくには難癖としか思えないことを言ってました。想定される津波の高さは何mで、それに耐えられるのか。どんな工事車両が来るのか気になって仕方ないから紹介しろ。工事現場見学ツアーをやれ。工事中でも震災時の羽田住民の避難場所は確保されてるのか、地震が来ても橋は落ちないのか。ほんとうは何を建てるのかお前ら知ってるんだろちょっと話せ、等々。


そんな中で、1人、戦争中の話から始めたおじいさんがいました(おいおいそこまで戻るのか、とちょっと思った)。説明会のメンバーに向かい、お前らは何も解っていない、地域住民の痛みを解っていない、羽田空港の土地を造成するのなら、まずそこから話を始めるべきではないのか?と、大層お怒りなのです。

でも、話を伺って、納得しました。今回造成する三角形の土地は、もともと羽田住民のものだったのです。それが、敗戦により、空港を作るために米軍に接収されたと。米軍から国に返還され、国から大田区に返還され、そのままであると。昔その土地に住んでいて、追い出された人がいる。その人たちはいまもこの町に住んでいるのだ。土地を造成しますとか事業をやりますとか言う前に、もともとそこに住んでいた人たちに、これから羽田をどうしていきたいのか、語ることばはないのかね?というようなことを、おじいさんは言いました。いつか帰れるのかね、とも言ってました。もちろんおそらく帰れるなんて思ってはいないでしょう。

ぼくはこの土地の歴史を知りませんでした。つーか、飛行機好きー!くらいの軽い気持ちで引っ越してきたヨソの人間です。でもここには、そもそも羽田に空港が作られるのを自分の目で見た人たちがまだ住んでいたわけです。いやーおとなしくご意見を傾聴しておこう、と思いました。説明会メンバーも「仰る通りでございまして大変申し訳ございません」と謝罪し、まぁ演技かも知れないですけど、みな深くうなずき、細かくメモを取っている人もいました。


それにしても、説明する側の人たちのとにかくこの場をうまく収めようという強い意志を感じました。やたら腰が低いし丁寧。そして場馴れしている。まず司会が、だらだら話された質問内容をコンパクトにまとめ、復唱して「……ということでよろしいでしょうか?」と確認します。そして適切な人が回答する。あらゆる質問を想定しているのか、表や図や写真がすぐ出てくる。すぐには判らない内容もどこかに電話して聞いて回答していました。そして、できませんとは絶対に言わない。「やります」か「検討します」と返す。まぁ検討しますはやりますじゃないですけどね。でもそのテクニックの効果か、回答内容に対して質問者が納得せず異議を唱えるような場面は見られませんでした。きっと、過去何度も何度も説明会で炎上が起こり、住民の反対で工事が進まないという経験をしてきて、こういう形が醸成されたんじゃないかなぁと思いました。