- 作者: ラリー・ジョンソン,スコット・バルディガ,渡会圭子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/19
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 723回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
非常に面白かった。最後、アルコー延命財団に著者が裏切り者として付け狙われるようになるところで終わるんだけど、それは本を出ていまのこの現実につながってる。財団はまだ存在し、裁判も続いていて、著者と夫人は財団関係者に襲われる恐怖から身を隠しているという。
「死体を冷凍し、科学・医学技術の進んだ未来に復活の希望を託す」という、その発想は突飛ではあるけれど、科学好き・SF好きなら受け入れられない話でもないと思う。でもこの財団、オペレーションが極めてずさん。ノミとハンマーで頭を胴体から切り離し、始終止まるポンプで血液を抜いて薬品と入れ替え、鼻に温度計を突っ込み、ひっくり返した頭を転がらないよう猫缶の上に乗せ、頭蓋骨に穴を開けて差し込んだマイクで脳にヒビが入る音を測定しながら冷凍していく。著者曰く、おそらく冷凍時に細胞膜も壊れているだろうという。
ではそんなヒビだらけ、解凍したらぐずぐずになってるだろう脳で、どうやって第二の生を得ることができるのか? 「いずれナノテクノロジーが進歩し、ごく小さな分子を扱う装置ができ、細胞レベルで人間の体を修復し、複製することができるようになる」と素朴に信じられているらしい。ナノテク。魔法の言葉すぎる。この言葉が出てくる前は何にすがっていたんだろう。こんな子供騙し、ママゴトみたいなオペをしながら、どんだけ呑気な未来に生きてるんだか。過度に科学を信じ、過度に死を怖れている。
まぁそんな、トンデモ科学カルトの話でした。人体冷凍とかもっとまともなもんだと思っていたんですけどね。この手の団体は他にもいくつかあるらしい。あと、実際はここに記したよりもっとずっと気の狂った内容がいろいろ書かれているのですが、ネタバレを回避しました。ぜひ読んで、ショックを受けたり絶句したり気分悪くなったりして欲しいw