- 作者: 鈴木伸元
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/11/27
- メディア: 新書
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書こうと思ったら「情報考学 Passion For The Future」さんでもう書評が書かれていたので、まぁぶっちゃけちゃんとしたものはそっち読んだほうがいいかと思います。
平成20年の犯罪件数は253万3351件。被害者家族はマスコミ取材による二次被害で心の傷が癒える間もないが、実は加害者家族も凄惨な生活を強いられる。身内の犯罪を機に失職や転居を余儀なくされるだけでなく、インターネットで誹謗中傷され、写真や個人情報まで流出される。そんな過酷な現実を受け止められず、自殺する人も多い。事件への自らの非力を嘆き激しい後悔に暮れる加害者家族も多いが、そもそも身内の犯罪を未然に防ぐには限度がある。まさに他人事ではない実態を明らかにした、衝撃の一冊。
この本は、実際にあった有名事件の加害者側家族の「その後」について取材した内容が多く含まれています。考察そのものはそれほど多くない。まぁぼくも、「その後」はいったいどうなっているんだろう、という半ば興味本位で買ったわけです。そしてその実態は、想像を超えて悲惨でした。ただ、なんとなく、それを、やっぱりそうなるんだよな、そういうものだよな、という覚めた目で見ている部分もあった。
ですが、下記の記述を見てショックを受けました。
1998年にアーカンソー州の高校で銃乱射事件が起きた際、高校のキャンパス内で発生したという事件の重大性に鑑み、マスコミは加害者少年の実名や写真を掲載した。
このとき、加害少年の母親に対してアメリカ社会がどのように反応したのか、ジャーナリストの下村健一が驚くべきリポートをしている。
実名が報道されたことで、母親のもとにはアメリカ全土から手紙や電話が殺到した。手紙は段ボール2箱に及ぶ数だった。
だが、その中身は、本書でこれまで見てきたような日本社会の反応とはまったく異なっていた。加害少年の家族を激励するものばかりだったのだ。
TBSの「ニュース23」で放映されたリポートでは、少年の母親が実名で取材に応じ、顔を隠すことなく登場した。下村が、受け取った手紙の内容は何かと聞くと、母親は「全部励ましです」と答えたのだ。
下村は自身のブログでその手紙の内容をいくつか紹介している。
「いまあなたの息子さんは一番大切なときなのだから、頻繁に面会に行ってあげてね」「その子のケアに気を取られすぎて、つらい思いをしている兄弟への目配りが手薄にならないように」「日曜の教会に集まって、村中であなたたち家族の為に祈っています」等々。
下村は、アメリカでの取材生活の中で「最大の衝撃」を受けたという。
加害者家族への攻撃・非難中傷は、そもそもがなくてもよいものであり、ないこともできたのでした。その可能性にすら思い至らなかった。もちろん、本人の罪は法により裁かれるわけで、家族や関係者への攻撃は、何ら正当な根拠を持ちません。しかし、日本の社会は、なんとなくそれを許してしまっている。そう、ぼくがこの本を買った「その後を見たい」という動機。その陰には「応報」思想が隠れている。おそらくそれはそのままなめらかに、加害者家族への攻撃へと通じるものなのでしょう。境目はないのです。
意外ですね。日本を訪れた外国人が日本人の親切さに驚く、という記事を時々見ますが、ひとたび何かがあるとそれは豹変する。ムラとかケガレとか、そういう言葉を思い出します。一方個人主義と言われるアメリカでの、非常時のささえ合い。自分の身にも起きうる可能性のあることなのだときちんと認識されているのでしょうか。でも、単純に日本は悪いとも言えません。実際には、犯罪の発生率自体は、アメリカのほうがケタ違いに多いのです。単純に民度などということばでくくれるものでもないと思います。
まぁ、これから犯罪をしよっかなー、と考えている人はあまりいないと思うのですが、自分が捕まったのち、身内がどれだけ悲惨な目に合うのか、それを知るためにこの本を読んでみるのもいいかと思います。ある日突然生き地獄に叩き落とされるのです。理不尽さでは、被害者家族と同等なのではないでしょうか。そしてその理不尽さを表明しようとしても「被害者家族よりマシだろ」と言われると、もう飲み込むしかなくなってしまう。この本の内容は抑止力として働く部分もあるかと思います。
ちょっと、"祭り"に安易に乗ったりするの、反省したほうがいいのかも知れません。まぁすぐ忘れるんですが…。