たまには役に立つものを書きましょうか。まぁ、この本を買え?
- 作者: 加藤典洋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/10/08
- メディア: 単行本
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ここでも何度か取り上げてますけど、ぼくが他人に薦められる数少ないホンモノ、のひとつです。一生のうちの2400円だから安い。ぼくの文章の書き方の多くの部分、思考法のいくらかの部分は、この本によってます。どうやったら面白い文章が書けるんだ?とか悩んだことのある人には、たぶん有効。いわゆる文章読本のなかでは、かなりユニークなものだと思います。
先日書いた「オタクは2択」を例に、この本で言われていることの一部を、ぼくなりのアレンジで言ってみます。
■書き出しは飛べ!
だらだら始めるなー、ということ。高く飛ぶ。「うわ!」ってくらい高く飛んだなら、華麗な演技で着地しようが、無様に落ちて転げようが、とにかく見ものにはなるでしょう?
ぼくの奥さんはかわいい。美人である。なんで臆面もなくそんなことを言えるのかというと、客観的事実としか思えないからだ。
ここまで書いたらふつう引っ込みつかないじゃないですか。これぐらいプレッシャーを掛けたほうが勢いが出てよいものになるんだと思う。
■終わりは締めるな!
や、無理して締めるな、というだけです。これについては本の中に秀逸な(悪)例がいっぱいあるんですが、買ってから見てください。しっかり何か言いたいことがあるんならいいんですが、そうではない、ちょっとひとこと言いたくなった、程度の文章なら、締めないほうがいい。特に、綺麗事言って終わるのは、新聞の読者投稿欄みたいな文になっちゃいます。
そんなふうで、ぼくは面食いであるゆえ外見を取った。そして失敗した。そしていまはひとり暮らしをしていて、趣味に金を使い放題である。世の中何が幸いするかわからないものだ。
あー、なんか加速してそのまま崖から落ちたようなオチですね。わりと好き。まとめ方が思いつかないなら、こういうこともできるんです。
■安易なタイトルはやめろ!
「オタクは2択」……ごめんなさい。ちょっと安易でした。だって眠くて。会社だし。でも今見るとせめて「オタクの2択」にしておくべきだったと思う。いつもはもうちょっとちゃんと考えてますよ。そうは見えないかも知れないけど、タイトル考えるのに30分ぐらい掛けるとか、ぼくは普通にあります。ブックマークされて「人気」「注目」に上がってくるような記事にしたって、みんなタイトルが刺激的じゃないですか。ぼくは「雑記」とかのタイトルになってる文章や日記はハズレが多いので読まないようにしてます。
で、肝心の本文はナニを書いたらいいのよ、というのは、これです。
■自分にしか書けないことを、誰にでもわかるように書け!
これアレンジないな。本そのまま。
「誰にでも書けること」をそのまま書いただけ、とか、「誰にでも書けること」をコムズカシソウに言ってるだけ、とか多い。「自分にしか書けないこと」を難しく言うと小論文のできあがり。まぁ、これら3つもアリなのかもですが、人に受けやすいのは、やっぱり最初に挙げたやつでしょう。
「誰にでもわかるように」はある意味当然。じゃ、「自分にしか書けないこと」ってどんな?ってのは、
- ユニークな経験
- ユニークな視点
- ユニークな文体
など、だいたいここらかー?と思います。このうち「文体」はちょっとなかなか難しいですが、罵倒芸の人などがそうかも知れません。「経験」も(「オタクは2択」はコレですが)、たとえば「○○だけど、何か聞きたいことある?」みたいな特殊めな職に就いてたりすれば、もう何書いてもそれなりに面白いわけですよ。
でも、そうではない、ただの会社員や学生や主婦やニートやフリーターやひきこもりはどうすんのよ、と問われると、「視点」を磨くしかないかなぁ、と思います。自分の意見がありきたりなものだと感じていたら、たとえそれが正しくても、言わないこと。だってそんなの他でも読めますから。面白い文章を書きたいと願うのなら、そうなります(「面白さは正しさに優先する」)。
ここに挙げたのは「すぐ使える」系ですけど、本にはもっとずっと深いことがいろいろ語られてます。というか語り口自体面白い。そして他の加藤さんの本みたく難しくない。アマゾン五つ星。推奨。