すべての夢のたび。

1日1記事ぐらいな感じでいきたい雑記ブログ

あなたの知らないスゴ本を、どうもわたしが今読んでるっぽいな

エントリタイトルはベイティング(英語で言うとなにかが赦される感)。


唯心論物理学の誕生―モナド・量子力学・相対性理論の統一モデルと観測問題の解決

唯心論物理学の誕生―モナド・量子力学・相対性理論の統一モデルと観測問題の解決


これなんです、タイトルからしてもう爆うさんくさい感じですが。まえがきの一部を引用します(入力の手間を惜しんで、こちらに掲載されていたものをコピーさせていただきました)。

 本書では機械論に代わる世界モデルを提示する。モナドを世界の構成要素とする唯心論世界モデルである。これはライプニッツのモナド論にヒントを得たものであるが、モナドの思想はシステムとは何かということを徹底して考えるならば必然的に到達する考えである。
 この唯心論世界モデルには物理学の基礎理論である量子力学と相対性理論が極めて自然に組み込まれる。これにより、観測の問題が解決されるだけでなく、物理の基礎法則の意味、われわれの主観的経験の意味が解明され、物質現象から生命現象、社会現象にいたるまでが体系化されるのである。


最後の1文がすごい。全部だ!全部説明してやる!って勢い。そしてこのあとはこう続く。

 ここで一言断っておきたい。本書の理論は決して「高度に複雑な系では要素に還元できない新しい法則が生まれるのである」などという安易な主張にくみするものではない。このような主張は物理学をまともに理解していないものの主張である。


カッコよすぎて鼻血噴きそうです(著者は高知大学理学部助教授)。しかし多くの本では読み進めていくと「どうもこれ……トンデモ?」って感じになってくるんですが、この本はぜんぜんそっち(オカルトやスピリチュアル方面)には傾かない。徹底して物理学っぽいままどんどん進みます。(不安なのは「モナドロジーベースで世界モデルを創る」ってとこだけだ←そこが最大だろ)

そして、この人は記述力がとても高い。物事に対する深い理解があるからそうなるのだと思う。たとえば本書中で観測問題について説明されている箇所があるんですが、こんな感じ。

 量子力学における観測の問題とは要するに次の三つの命題の間の矛盾である。

 命題Q1:(シュレーディンガー方程式の原理)
 量子力学においては対象とする物理系(システムと呼ばれる)の状態は波動関数(状態ベクトル)によって表され、それはシュレーディンガー方程式による決定論的な時間変化をなす。

 命題Q2:(観測に伴う状態ベクトル収縮の原理)
 この波動関数は観測結果を確率的に決定する。ある結果を得たときには波動関数はその結果に対応する固有状態に収縮する。

 命題Q0:(普遍的適用可能性の原理)
 量子力学は物理学の基礎理論である。したがって、それは「あらゆるもの」に例外なく適用されなければならない。


そして、矛盾を解消するための策として、Q1を捨てると「シュレーディンガー方程式の変更(収縮過程を加える)」、Q2を捨てると「多世界解釈」、Q0を捨てると「観測者の意識の導入」になると言います。うわーなるほどなぁ、と思った。

もすこし引用。「世界モデルの記述者」について書かれたところはこんなふう。

 哲学的思考ではこの場合、記述者が世界の中に入ったまま世界を把握しようとする。その結果極めて難解な「哲学的思考」が展開され、「絶対矛盾的自己同一」あるいは「吾思う故に吾あり」という状況に至るのである。
 物理学的思考では、しかし、記述者はごくあっさりと世界の外に立ってしまうのである。その結果世界はすべて対象化され、世界モデルはすっきりと数学的に構成できるようになるのである。しかし、この方法を無造作に実行すると記述者の存在を忘れてしまうことになるのである。そして、記述者の側にだけあるものとして「意志」「意識」「流れる時間」「自然なシステム」などは記述者を忘れると共に忘れてしまうのである。


こんなふうに、シンプルで力強い文章でどんどん断じられていく様がとても心地よいです。

ここまでで充分楽しめた。もうおなかいっぱい感。どういうオチになろうとかまわないぞ(←著者に超失礼)。しかし、いよいよこれから「モナドロジーをヒントにした『量子力学と相対性理論を統一する世界モデル』の数学的記述」の項に入っていくのです。うわーもうたまらん、大興奮ですね。これこそ本を読む楽しみかと。