心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる (ブルーバックス)
- 作者: ロジャー・ペンローズ,中村和幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/04/20
- メディア: 新書
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だいぶ前の本です。ペンローズ大先生の本なので期待して読んだんだけど、ダメだった。大先生にダメ出しをするほどぼくは偉いのか。
どこがダメって。この本でペンローズはベンジャミン・リベットの実験を取り上げてるんですよ、例の有名なやつ。人は、なにか行動を起こそうと意識する1秒も前に、もう脳内の電気的活動が始まってる。自由意志ってなんだっけ?みたいなあれ。
この話、単に「意識は受動的なものである」のひとことでケリ付いちゃうんですけど、ペンローズはこれをことさらにややこしくしようとしている。現在の物理学が不完全なせいでこのパラドックスがうまく理解できないのだ。脳内の量子的非局所性を説明できる新しい理論が必要なのだ。そう言っちゃってるんですね。
これ、どう考えてもペンローズが脳科学に詳しくなくてトンチンカンなこと言ってるようにしか聞こえないんです。単純に、無意識が意識に先行して反応してて、でも意識は自分は最初から知ってたみたいに振る舞う、それだけの話のはずなのに。でもペンローズは、広範囲のニューロンで量子もつれが起きてるとか、重ね合わせされてるけど実際には起きなかった事実をニューロンは利用してるとか、どうもそう考えてるフシがあります。
まぁ古い本(原著は1997年)なので、今のペンローズの考え方がどうなってるのかは知りませんが。ちなみにペンローズはスティーヴン・ホーキングと一緒にブラックホールのいろんな理論を作った人です。あとエッシャーの絵のモチーフになってる「どこまでも昇れる階段」はもともとペンローズのアイデアだったらしいです。