すべての夢のたび。

1日1記事ぐらいな感じでいきたい雑記ブログ

赤の女王仮説が仮説でなくなる?の2

昨日の続き。元のブログ(サイエンスあれこれ)のエントリ「赤の女王仮説」より、赤の女王仮説の説明を引用します。なお、言及の都合上3節に分けましたが、元のエントリでは連続しています。

すでに適応しているのなら、自然選択は働かない(それ以上進化しない)はずだし、自然選択が働いているということは、未だに適応しきれていない(そのうち絶滅する)ということをどう説明するか。

Valenは、種が絶滅する可能性は、その種がそれまで存続してきた年数に関係なく、どの種でも等しいことを地質学的調査によって発見しました。これは、過去にどれだけうまく適応できていても、その先いつ適応しきれなくなって絶滅するかはわからないということです。

つまり、(環境は絶えず変化し続けているので)完全に適応するということは不可能であり、そのため常に自然選択は働き続けて、絶滅することをぎりぎりのところで回避しているというわけです。


1節目では、「適応」は「その環境で生きるための最適な形態になること」として、また「進化」はその最適な形態に近づいていくこととして捉えられていることが伺えます。つまり、ゴールへ向かって走っているイメージですよね。そして、ゴールに辿り着いたならもう走らなくてよいはずなのに、実際は延々走り続けているように見える。さてこれは何が起きているのか?みたいな状況を説明するのが「赤の女王仮説」なわけですね。ゴールは常に変化し続けている。だから走り続けなくてはいけないのだ、という。

でも、何かこの説明は違うような気がするのですよね。特に3節目の「常に自然選択は働き続けて、絶滅することをぎりぎりのところで回避している」というところは違和感が強いです。どう見ても、コアラとか、絶滅をギリギリで回避しているようには見えないものなぁ(笑)。いや、時間を圧縮すればそう見えるのかもしれないですけど。

ぼくのイメージはちょっと違います。ふたつあるんですけど、ひとつは「ゴールはない。みな適当に走っているだけ」というもので、もうひとつは「とっくにゴールしちゃってる。ゴール後にみな適当に走ってるだけ」というものです。どっちも似たようなものなので、後者ベースで説明します。地上でも水中でも、生物って多くの種類が存在するわけじゃないですか。同じ場所にも何種類も生物がいて、それぞれがちゃんと生きている。ある場所にもともといなかった生物を連れてきても、そのまま居付いてしまったりする。つまり、多くの生物はすでにオーバースペック/適応過剰であり、その環境で生きていくのに必須でないような部分のバリエーションが増えているだけではないのか、みたいな。厳しい環境の生物種は少なく、熱帯とかだと豊富な訳も、そういうことなんじゃないでしょうか。


さて、2節目では、「種が絶滅する可能性は、その種がそれまで存続してきた年数に関係なく、どの種でも等しい」と記述があります。それはどういうことなのか。この部分がかなり興味深かったのですが。

元のエントリの後半では、分子系統樹から割り出した種分化の頻度は赤の女王仮説を支持するものであった旨の説明があります。そしてその「赤の女王仮説が仮説でなくなるかもしれない」ということが一体何を意味するのか? 種の分化の要因は「生物的な相互作用に基づく適者生存の原理によりゆっくりと少しずつ進行する進化モデルとは合致しないことになり」、「非常にまれにしか起こらないが、影響力の強い要因」「例えば地形の変化による物理的な生殖隔離のような状態を想定している」ということになるそうなのです。

つまり、赤の女王仮説の言う(走り続ける)継続的な自然選択は、生物同士の食うか食われるかの生存競争の中にあったのではなく、まれだが突然起こる大規模な環境の変化に必死に対応してきた結果だったということです。


この結論は、なかなか衝撃的なものではないでしょうか? だってこれ、いままで聞いてきた話とだいぶ違いますよね(笑)。ちょっとずつちょっとずつ変わっていくんだよ、ってはずだったのに、一気にどーんと変わるんだよ、と言われてしまっているのです。ていうかそれをそもそも「継続的な自然選択」と呼んでいいのかどうか? 実際起こってるのは、飛び飛び、なのですよね。ちょっとずつ変わっていくはずなのになんで中間状態の化石が見つからないの?ということについてあれこれ理屈が考えられてきましたけど、実は飛び飛びでした、というのなら納得もいきます。

今回の件がもし今後確かな事実として認められていくのであれば、ネオダーウィニズムの主張することもいろいろ変更を迫られるのではないでしょうか。……というかぼくの説明も変更を迫られています(笑)。ゴールは時々設定され、一旦設定されるとみんなワーッとそこへ向かって走る。そしてゴールした後はみなそこら辺をぶらぶら適当に走っている、みたいなふう?