すべての夢のたび。

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正確な記憶は役に立たない

のうだま2 記憶力が年齢とともに衰えるなんてウソ!

のうだま2 記憶力が年齢とともに衰えるなんてウソ!


池谷裕二さんの本は、脳科学関連の比較的最近の知見が盛り込まれてるので、新刊は取り敢えず買うようにしてます。「のうだま」シリーズはその中でもかなり易しく書かれてる部類なんですけど、ちょっと面白い話があったので紹介。

正確な記憶は役に立たない、という話。

「記憶力がよい」とは、世間では、素早く正確に記憶できることを指します。しかし、ちょっと考えてみてください。まるで写真に撮ったかのように完璧にものごとを覚えるのは、脳にとって一体どういう意味があるでしょう。正確な記憶はそもそも、役に立つのでしょうか。

 実際のところ、記憶は正確では役に立たないのです。あいまいであることが必要なのです。それは、覚えたい内容の特徴やルールなど、「パッと見」の下にひそんでいる共通項を自動的に選び出すためです。
 たとえば、今日初めて会ったAさんを覚えることを想像してみてください。赤色の服を着て、長髪で、眼鏡をかけている。
 もし記憶が完璧だったら、どうでしょうか。次にAさんに会ったときには、着ている服が違ったり、髪を切っていたり、コンタクトレンズをしているかもしれません。Aさんは別人になってしまいます。

 日常生活においては、全く同じ状況に再び出会うことはありません。だからこそ、脳はAさんの特徴を抽出しようと努力します。今見えるAさんの姿を完璧に覚えるのでなく、また、完璧に忘れてしまうのでもなく、普遍の共通項を記憶してゆくのです。


易しく易しく書かれているので、引用してるとどんどん長くなってしまう! 要は、人は、見たままを記憶するんじゃなくって、特徴を抽出して記憶する、そういうことをやってますと。これってたとえば検索エンジンと同じ方向性ですよね。一字一句違わない検索のほうが実は楽で、あいまい検索のほうが高級なことをやっている。そして画像検索はさらにめんどくさいことをやっている。

 動物を相手に実験しているとわかります。進化上で原始的な動物ほど、記憶は正確なようです。つまり融通が利かないのです。さらに都合が悪いことに、一回覚えた記憶はなかなか消えません。「スズメ百まで踊りを忘れず」という言葉を聞けば、「うわぁ、すごい記憶力だなあ」と尊敬に近い気持ちが生まれるかもしれませんが、そういう記憶は応用が効かないため、基本的に役に立たないと思っておいた方がよいでしょう。
 「モズの早贄」という習性をご存知でしょうか。モズは隠したエサの場所を忘れてしまうと言われています。しかし、これは「忘れてしまう」と言うよりも、写真のように正確に場所を記憶しているために、周囲の環境が変化した場合(たとえば枯葉が落ちるなど)、その風景が記憶内の風景と照合できなくなるから、エサの位置を発見できなくなるのではないかと考えられます。


ここで思い出されるのがサヴァン症候群の人たちのことです。あれは、いままでぼくのイメージとしては、「"ものすごい記憶力のよさ"に脳のパワーの多くが持ってかれて、その他の部分がちとおろそかっぽくなってる」って感じだったんだけど、おそらく違うんですね。あいまい検索を可能にする部分が故障してるってことなんだろうな。なので、まるごとそのままの正確な記憶を行ってる部分に直接アクセスすることしかできなくなってしまってるんだろう。そして健常者の人も同じデータを持ってはいるんだけど、そこへのアクセスは遮断されていると。

いや、単に、「正確な記憶はそんな偉くない。あいまいな記憶のほうが偉い」と言われて、ちょっと嬉しかっただけですw だってサヴァンの人ってすごいもんな! でも何年も前の記憶とかがまるで今起きていることのように正確に思い出されて混乱する、なんて話を聞くと、やっぱあいまいでよかったのかもーと思うんですけど。好きな時に好きなほう選べて使えればいちばんいいんだけどw


ところで今回、引用部分は音声入力でやってみました。それなりに訂正は入れなくちゃいけないけど(漢字に変換しすぎなのをひらがなに開いたり)、でも全部手で打つよりは早いかな?