すべての夢のたび。

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ちょうちょ地雷

奇妙な書名に引かれてうっかり手に取った。“ちょうちょ”+“地雷”。ぜったいとけあわない2つの単語。秀逸なネーミングの勝利だ。

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ロシア製のPFM-1は、ヘリコプターからアフガニスタンの地上にばらまかれた。その羽根は2つの役目がある。風に乗って広範囲に散らばること。おもちゃに見せかけて子供の目にとまることだ。PFM-1の多くは踏んでも作動しない。子供が手に取り、羽根をいじってあそんでいると────爆発。片手または両手を失い、胸に大やけどを負い、失明する。爆薬の量は標的が死なない程度に調整されている。


この本の著者はジーノ・ストラダ。職業は「戦場外科医」。世界中の紛争地帯を飛びまわり、分けへだてなく治療にあたる。といっても、ジーノの患者の9割が民間人、3割が子供なのだそうだ。子供を狙えば「将来の戦力」をそぐことができるだけでなく、ずっと敵の手をわずらわせる荷物を作ることができる。敵の士気もさがるし、兵士よりも狙うのが楽だ。彼のもとにはつぎつぎと子供たちが運びこまれる。

「右腕はなくなり、焼けこげたカリフラワーのような、ひどいどろどろの塊があるだけ。左手は指3本がぐちゃぐちゃにつぶれていた」
「血だらけの髪の毛の間で脳の一部がぐしゃぐしゃになっている」
「前腕にひどい傷があったが、ほんとうに悲惨なのは、地雷で吹き飛ばされ膝の上までつぶれた脚で、筋肉の一部と衣類のきれはしがかゆ状になっていた」
「右腕と右脚はぐちゃぐちゃ。裂傷が左目をつらぬき、顔には他にも傷があった」

14歳のハイダーは地雷を踏んで右脚を吹き飛ばされた(ジーノ医師の生まれ故郷イタリア製!のVS-50だ)。やがて彼も、傷口がふさがり、義足をもらい、リハビリテーションを終えると、ふたたび地雷だらけの土地へ帰っていく。そこが彼らの家なのだ。彼らは生まれたときから銃声と砲弾の破裂する音の中にいて、人はかんたんに死に、順番で地雷を踏むことになっている。世界がそういうところであることに、なんの疑いももっていない。

ジーノは祈る。“こんど地雷にあたったら、義足の方で踏むんだよ”


ちょうちょ地雷―ある戦場外科医の回想