すべての夢のたび。

1日1記事ぐらいな感じでいきたい雑記ブログ

想像したより世界はひどい

地を這う祈り

地を這う祈り

いまいちばんのっているノンフィクション作家、石井光太氏がアジアの貧困地域を歩き撮りためた衝撃的な写真たち。秘蔵の数千点の中から厳選し、短めの物語を添えた著者初のフォトエッセイ集です。これまで著者がノンフィクション作品で書いてきた様々な地域の真実の姿が、ついにあらわに。写真だけでは伝わらない、貧困地域のむき出しの物語はショートエッセイで。


メシがマズくなる本。書店でなにげなく手に取り、3枚の写真を見て、そのままレジに持っていった。

1枚目は、頭から血を流して道端に横たわる少年の写真。上半身は裸で、脱いだシャツの上に寝ており、そこにコインが十数枚。キャプションによると、ストリートチルドレン同士の抗争で、負けた側はこのように一日物乞いをさせられるのだという。集まったお金は勝った側が持っていってしまうらしい。2枚目は、全身イボだらけの男性の写真。特に上半身は顔面を含めくまなく大小のイボで覆われており、いったいどのような病気でこんな凄まじいことになってしまうのだろうと思う(工場から出るようななにかの有害物質だろうか?)。彼も物乞いだ。

3枚目は、右手を切断された子供の写真。付されたキャプションをまるごと引用する。

 インドのマフィアは、ストリートチルドレンの手や足を切断し、物乞いをさせることがある。
 手や足がなければ、通行人はより同情し、お金を渡そうとする。腕があるのとないのとでは、一日の稼ぎが数十円から数百円違ってくる。そのため、ストリートチルドレンを裏で操っているマフィアは、より多くの金を稼ぐために、子供の体の一部を切り取ることがあるのだ。
 ある日、私が道を歩いていると、この子がしゃがみこんで、傷口に汚泥をこすりつけているのを見かけた。私が止めようとすると、彼は拒み、次のように言った。
「傷口をわざと化膿させているんだ。そっちのほうが儲かるし、ボスもほめてくれるから」
 彼は、たくさんお金を稼ぎ、自分を傷つけたマフィアに喜んでもらおうとしていたのである。



ぼくが想像していたより、世界はひどいところのようだった。ひどい側に向かって、より深く広がっている、と言ったほうがいいのかもしれない。ここらあたりがだいたい「果て」なのだろうか。それともさらにもっと向こう側があるのだろうか?


この本には、こういった話や写真がまだいくつも載っている。そして考え込んでしまう。彼らにお金を恵んでやることは正しいのか、正しくないのか? 正しくないのだとしたら、ではどうすればいいのか? 正しいとか正しくないとかそんなことは全然関係なく、もし出会ったのならとにかく恵んでやるべきなのか?

薄々感じるのは、すでにこういう境遇にある人たちや子供たちに対しては、してやれることはほとんどないんだろうな、ということだ。世界が変わるのには時間がかかる。何をしても、いまの彼らに届くことはないだろう。

いま外は雨で、気温も低い。ぼくは雨に濡れたり凍えたりすることもなくこの文章を書いている。この部屋には雨風をしのぐ以上のものが多くある。日本はいい国で、ぼくは幸福だ。ぼくはぼくの生活を楽しむし、これからもそうするだろう。心ある人はこういう本を見たらどうするのだろうか?